ストレスと食事
普段はラーメンを食べる時にコショウをかけないが、妙にかけて食べたくなったりと
いつもはあまり使わない、コショウや七味などの香辛料を食事に使いたいと思う時は心身に
『ストレス』が蓄積しているかもしれない。
東洋医学(中医学)では、人は肝の疏泄(そせつ)という機能でストレスに対応していると考える。
疏泄とは、「すみずみまで円滑に行き渡らせる」働きを意味する。
肝は、疏泄という機能で気や血の流れを円滑にして精神を安定させる働きがある。
しかし、強いストレスがかかると肝が障害され疏泄機能が低下する。
そのため、肝の気が鬱滞(うったい:渋滞する。滞る)し、肝鬱(かんうつ:イライラや生理不順など)という病証が生じる。
五行論では、五臓と五味には以下のような関係がある。
・木 - 肝 - 酸味
・火 - 心 - 苦味
・土 - 脾 - 甘味
・金 - 肺 - 辛味 ⇒ ピリッとした辛さ(香辛料)
・水 - 腎 - 鹹味 ⇒ 塩辛さ
肝は、「木」に属し、「金」や「土」とは相克関係(そうこくかんけい)にある。
相克関係とは、相互に働きを抑制する関係のこと。
例えば、「木」は「土」から養分を奪う。「金」は「木」を切り倒す。
ジャンケンでいう「グー」、「チョキ」、「パー」のような関係と言える。
「金」に属する味は、「辛味」であり、この味には発散させる作用がある。
肺に働きかけて発汗を促し、風邪の治療に用いることができる。
昔から風邪の時に生姜湯を用いてきたのはこの作用を期待したためと考えられる。
また、「辛味」は相克関係にある「肝の疏泄機能」を改善し、肝鬱を発散してストレスを軽減することができる。
男性がストレスを適度な「辛味」を摂取して発散するのは特に問題がないのだが、
女性の場合、過度の「辛味」は時に問題を引き起こすことがあるといわれる。
肝には全身の血液量を調節する「蔵血」という重要な作用もある。
毎月生理で出血する女性にとっては、肝の「蔵血作用」は重要な役割を持つ。
しかし、「辛味」を取り過ぎ、発散を促すと乾燥を誘発する。
その結果、肝の蔵血作用が低下し生理不順などの原因となるので注意が必要だ。
女性の場合、ストレスが溜まると欲しくなるのは「甘味」という人も多いかもしれない。
「土」に属する「甘味」には、緩和の作用と補う作用がある。
相克関係にある「木」の肝に対しては、疏泄機能を補いながら緊張を緩和する作用をもたらす。
多くの女性がストレスの軽減に「辛味」でなく無意識に「甘味」が欲しくなるのは、上記のような「辛味」に対するリスクを身体が知っているからだと中医学では考える。
私は男だが、ストレスが溜まるとどちらかと言えば「甘味」を欲する。あと、タバスコをパスタやピザに尋常じゃない量をふりかけて食べたくなる。
ただし、いずれの味も取り過ぎは良くない。
「甘味」は食べ過ぎると、体内に「湿」を生みだし「脾胃」の機能を障害する。腹部の膨満、下半身の浮腫、肥満等を引き起こす可能性がある。
「辛味」は食べ過ぎると、発散作用が過剰となり正気が減少する。また、精神を衰弱させる恐れがある。
いつもより「辛味」や「甘味」が妙に欲しくなる時は、何か心配事やストレスがあるかもしれない。
もし、思い当たる時は、ストレスに対する冷静な対応と「辛味」や「甘味」の取り過ぎに注意すると良いかもしれない。
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